第5章 5話
(楓side)
そしてその週末、私は朝早くから逢沢君とのデートの為にいつもは高い位置で結んでる髪も肩に降ろして、右の横髪の一束を編み込み耳の上で銀のピンで止め、服装は焦げ茶のキュロットにチェックのシャツと上から灰色のフード付きのパーカーの上に革ジャン、そして、黒のショートブーツを合わせた。
可愛いのは着れないけどこれくらいなら私でも着られる。それが今日のコンセプト。軽くファンデを塗ってアイラインとアイシャドウを施し、柑橘系のミストをさっと一拭きすれば完了。
ブッブー。
私「もしもし。」
逢沢「準備終わったら出てきて、待ってるから。」
窓から顔を出せばお目当ての彼は電柱の影で癖っ毛な茶色い髪を整えていた。
私「おはよう。」
何だか一昨日からメールも電話もお互いに遠慮してしまいがちだったから少々気まずい。
逢沢「今日の山吹何だか大人っぽい。」
よかった。逢沢くんは逢沢くんだ。ホッとした。
私「コンセプトは私でも着れるカジュアルコーデ?」
逢沢「何だそれ笑だけど似合ってる。可愛い。」
ちょっとドキッと心臓が反応した気がする。
あいつだったらこんな言葉かけてくれないんだろな。
逢沢「今日の予定を説明してる時間ねーから急ぐぞ。…ほらっ」
彼は私の手を掴んでぎゅっと恋人繋ぎをすると私の気持ちも考える事なく猛スピードで走り始めた。
虹村「うわぁっ。朝から忙しい奴らだなぁ!」
赤司「そーですね。」
虹村「何、赤司はあの二人が気にくわねぇの?」
途中バスケ部集団に出くわしたけど挨拶もする暇もなく軽く会釈と手を振るだけで終わってしまった。
赤司は虹村さんと話していて私には気づく様子もなかった。
赤司「今日は俺と約束してたはずなんですけどね。」
虹村「は?何が??てか、やっぱおめぇ怒ってんのか!、笑笑」
この前の件でギクシャクしてしまって逢沢くんも赤司も邪険にしたくなかった。私は午前は逢沢くんと午後は赤司との約束を果たすつもりだ。
両者共にその話はしてない、というより出来なかった。
けど、赤司には話してもよかったかもしれない。