第6章 Faith
度重なる暴動の鎮圧にあたったのは警察と白雪姫自身だった。大臣や宰相たちに頭を下げ、君主制政治の終了と民主化のために動くと宣言すると世間からの反響も強く、3000年続く京都国の血縁政治もまた幕引きになるということに日本連合を組織する他国からの抗議も寄せられた。歴史を崩すつもりか、と。
白雪姫は屈することはなかった。
「歴史は繰り返すことであり、京都国の王子のようなうつけ者がこの先どの国に出ないとも限らない。またそのうつけ者を操り私欲のままに民を振り回す愚かしい王が出るやもしれない。政略結婚が仇になったいい事例であろう?」
街頭インタビューの記事や映像も毎日流れた。
白雪姫は死んだものとされていただけに、生きているとは思わなかった、や、ホンモノなのか、という声も多数上がった。
混乱が発覚したのはその中の一部が原因だった。
厳密に言えばインタビューを受けている人の近くにいた人の声をマイクが拾っていた。
「まさか日本が一つの国ではなく連合だったとは驚くべきことで、あの童話の白雪姫が女王だとは…随分と違う世界なんだな。」
トリップしてきたのは何も一人や二人でない、というのは警察の調べで明らかになっており、逆もまた然りだと教えられる。境界の結界の歪み以外にも原因があるとわかり、皆は頭を抱えていた。
前女王と大臣のお陰で京都の信用は失墜し、連合からの脱退も打診されるような惨状に陥った。
そんな騒ぎの渦中で白雪姫に縁談を申し込む声も多数寄せられる。
ある日ついに我慢の限界に達した白雪姫はみんなを呼び出し、告げる。
「私はこの国と結婚している。私と京都国の間に割って入ろうなんざ考えるのは誰であろうと愚の骨頂!!それに連合も京都の作ったものだ。乗っとろうとするなら正面堂々かかって来い!影でコソコソするのは私が怖いからか?小娘だと舐めてかかってるなら足元掬われるぞ
?」
ニヤリと笑い、議場を見渡した白雪姫は…否、通称「雪の女王」は凍りついた他国の使者をすくみ上がらせて謁見の間から駆逐した。
大きく伸びをすると振り返ってつぶやく。
「あれで良かったんだよね…父さん…」
おとぎ話の外の世界の住民の言うところの「ジャンヌダルク」が即位して数年で京都国は平穏と安定を取り戻した。