第6章 Faith
さあ急がないと一生ここよ?
そう微笑む勇ましい女性について走る。
警官は王子の動きを封じるために「本庁」というところに「リニア」で向かうらしい。
外の世界のことを全然知らない私には二人の紡ぐ言葉のうちの半分くらいしかわからない。
城の衛兵の手引きもあって案外すんなりと城の外へ出られた。が、あまりにも暗い場所に長い間いた影響が大きいのかシンデレラは崩れ落ちた。
王宮に来る女はみんな「王妃」になりに来たのだと教えられていたし実際そうだと思っていた。
だが、王妃にしてやると言った途端あの女は全力で拒絶した。王妃になんて絶対にならない。と啖呵を切り、幽閉した部屋でもずっとそう言っていた。
なぜだ?安定した収入も綺麗な服もアクセサリーも、食事もあるというのになぜ素直に従わない?
この国で王族は絶対ではないのか…民たちにその考えが浸透していないのか?
とにかく王子は混乱していた。
何故シンデレラに執着するのかついには自分でもわからなくなってしまっていた。
信用していた大臣も、女王である母親も結局は自分を疎ましいものとしてしか見ていなかったのだ。
誰もいなくなった謁見の間で一人立ち尽くす。
歴代の王たちの肖像画に見下ろされて声にならない悲鳴を上げる。
天井に目をそらせば曼荼羅が目に入って視界が揺らぐ。
背後を振り返ると間近で自分を見つめる目に気がつく。
「姉さん」
すんなり言葉が出てきた。
白雪姫は近寄り、その首に手刀を下ろした。
そして呟く。
「眠れ、弟よ。返還せよ、王位継承権を私に。」
気を失った弟の耳を飾る翡翠を外し、自分の耳に付けた。腰に下がる刀と握っていた鏡を身につける。
その頃城下では噂が流れていた。
おとぎ話というものが違う世界にあって自分たちはその話の住民にすぎない。
というものである。
おとぎ話云々は元より限られた人間しか知ることが出来ないことだったので上層部はパニックである。
民たちには隠していたのになぜだ?ということである。
混乱を極めたあとは真偽のほどを確かめようと王宮に多くの人が集まる。その対応には下っ端があたっていたが早々に限界を迎え、
「王様を出せ!!」
という声が日に日に高まっていった。