
第3章 Concentration

「貴女ですよ、ライラック色のドレスのお嬢さん」
キョロキョロするが周りにはピンクのドレスの人しかおらず、諦めて返事をした。
「私に何か御用ですか?」
一曲踊りましょう、と強引に中央に連れ出され、踊る羽目になってしまった。
その頃白雪姫は蔭で唖然としていた。弟が誰を指名するかと思ったら、シンデレラを口説いている。ああいうのが趣味だったのか…趣味悪いな、と呟き、小人たちとの合流場所に急いだ。
シンデレラはと言えば、一曲どころではなく、三曲分振り回され、フラフラになりながら城の廊下を急いでいた。早く行かなきゃ…パーティーは真夜中には終わる。それまでに解決しなきゃ…
「もしもし、そこのお嬢さん」
何者かにガシッと腕を掴まれた。
「お手洗いはこちらではございませんが、こちらに何用でしょう?」
やばい…シンデレラは内心冷や汗タラタラだったがおくびにも出さず、微笑んで見せた。
「手間が省けました。お目にかかれて光栄です…イカサマ大臣閣下。」
大臣の冷徹な眼が光る。
「シンデレラ!!あんたこんな所にいたのね?早く…」
駆けつけた白雪姫が最後まで言葉を紡げなかったのも無理はない。
「早く…何なのです?貴女方お二人はお仕置きが必要なようですね。」
二人はアイコンタクトを交わし、せーので白雪姫に着いて廊下を走った。目指すはー女王の部屋ーである。
白雪姫が一人で廊下を歩いているときに、誰かに呼ばれて足を止めた。振り返れども人っ子一人おらず、まあいいやと足を進めようとした時、声の出どころがわかった。部屋の中から声がする。
開けてびっくり、女王の部屋である。
「白雪姫…女王が王子に差し出すリンゴは毒リンゴ。決して食べさせないで下さい。さあ早く…」
鏡に礼を言って白雪姫はシンデレラと王子を捜しに小人たちと奔走した。
大臣閣下はご丁寧に女王と王子を呼び出して二人の不届き者をどう料理しようか考えていた。
白雪姫は毒リンゴのことをシンデレラに話し、またこうして囚われている間に弟がリンゴを食べてしまわないかと気が気でなかった。
「何用じゃ、大臣。」颯爽と現れた女王の顔はどんどん不機嫌になっていった。
「お主ら、名を名乗れ。否、聞く価値も『白雪姫にございます。』」
白雪姫の眼は真っ直ぐ間に女王を見つめていた。
王子は愕然とした。死んだはずの白雪姫と…ライラックの君がいたことに。
