第1章 first chapter
僕たちがそういう関係をもったは、一昨年の12月だった。
街はキラキラと輝くイルミネーションや、サンタやトナカイのモチーフによってクリスマス一色に染められていた。
子供は、ケーキ屋のウィンドウをのぞきこんでは、たくさんのイチゴののったショートケーキや、マジパンで作られたサンタののったブッシュドノエルを見て、目を宝石のようにキラキラと輝かせ、お母さんと思われる女性におねだりをしている。
そんな中、僕は殺伐としたオフィスで一人、仕事をしていた。
カタカタとキーボードを叩く音しか響かないオフィスに、突然、コツコツという革靴の音が響いた。
「コンコン」
革靴の音が止み、ドアを叩く音がした。
ドアの方を振り返ると、櫻井部長がいた。
櫻井部長は、僕とはあまり年が変わらないのに部長職についている、いわば、デキる人だった。
けれど、あまり気取らず、飾らなくて、部下からも上からも信用されるのはもちろん、人気だった。
そんな櫻井部長は、にっこりと微笑んで
「おつかれ」
と、缶コーヒーをくれた。
潤「わざわざ、すみません」
翔「大丈夫だよ、俺が好きで来てるだけだから(笑)」
潤「はい…(笑)」
櫻井部長は、笑うと整った顔がくしゃっとなって、その笑顔がとても可愛くて大好きだった。
潤「櫻井部長」
翔「ん、どーした?」
潤「もうすぐ終わるんで、先、帰っててください」
翔「じゃあ、俺もいる。もうすぐ終わるんだったら待ってるよ。」
潤「でも…」
翔「気ぃ使わなくていいから(笑)」
潤「…わかりました。」
それからしばらくたったとき
翔「松本、お前って、彼女とか、好きなやついんの?」
潤「いませんけど…」
櫻井部長が好きなんて、言えるわけなくて、嘘をついた。
翔「ふーん。」
潤「いきなりどうしたんですか?」
翔「ん、いや?なんでも?」
僕はなぜか落胆していた。
もしかしたら、告白されるんじゃないかって、少なくとも期待を抱いていたのだろう。
そんな淡い期待は、跡形もなく打ち消された。