第8章 失われた記憶
「......。」
部屋に戻ってしまったユリ。
太輔と裕太は急いで宏光の元に行く。
「北山!」
「っミツ!......傷、大丈夫!?」
「......。」
「......北山、おm..「俺には無理みたいだな......」......ぇ?」
「俺は......ユリの父親には、なれねぇんだな......」
その場に座り込む宏光。
「ミツ......」
裕太はしゃがみ込み宏光の肩に手を置いた。
「......北山、お前も今ので気づいたと思うけど......」
「あぁ......人狼としての覚醒、だろ?
さっきの腕の力が強かったのも、そのせいなんだろ?」
「あぁ......っんなことより、傷を見せろ......」
「思ったほど傷は深くねぇよ......」
「いいから腕を出せ。止血だけでもしとかねぇと......」
太輔はハンドタオルを出して真っ二つに裂けないように裂き宏光の腕に巻きつける。
「わりぃ......」
「いいんだこれくらい......ユリちゃんのこと、
相当ダメージ喰ってんな......」
「あたりめぇだろ......ついさっきまでのユリは、
『じゃあ行ってくるぞー。』
『いってらっしゃい、なの。』
もういねぇんだよ......」