第4章 恨み憎む男ー灰崎ー
「赤司さん…っ!」
ぽたり、俺の頬に透明な雫が落ちた
だんだん遠くなっていく意識の中、
名前の泣き声だけが聞こえてくる
胸が異様に熱くて、目も焦点が定まらない
俺はゆっくりと腕を持ち上げて、すぐ目の前にある名前の頬にそっと手を添えた
「……赤司さん…?」
ぽたり、
また俺の頬に涙が落ちてきた
泣くな
泣かないでくれ、名前
お前が笑ってくれるなら、俺は何だってする
だから、泣き止んでいつもみたいに笑ってくれ
「…名前……」
「は、はい、なんですか…っ?」
縋るような表情に、俺は必死に息を整えながら言葉を紡いだ
「…すまない、な…」
「どうして、謝るんですか」
「…護る、と言った…が」
「護って下さったでしょう?
ちゃんと、私を…っ」
違うさ、そうじゃない
「……っ、泣かせて…」
「え…?」
護ると、言ったのに
「泣かせて…すまない…」
それだけ言うと、一気に身体の力が抜けた
ずる、と彼女の頬に添えていた手もずり下がって
名前の声も聞こえなくなって、
それきり視界も真っ暗になった