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赤い吸血鬼と女の子 [黒子のバスケ]

第3章 不穏な心


なんでそんな顔をするんだ

一瞬そう思ったけれど、すぐに聞いてはいけないことを聞いてしまった、と気付いた


「…すみません、あの」


「…いや、別にその人間が死んだ訳じゃないよ」


「え?」


「ただ、何となく…それ以上は吸いたくなくなったんだ」


「美味しかったのに?」


「あぁ」



不思議な話だ

やっと美味しいと思える血と出会ったのに
吸うのを一度限りで止めてしまったなんて



「今も、その方は生きていらっしゃるんですか?」


私の質問に赤司さんは私を見た


すごく優しい、でもどこか寂しそうな眼差し


…どうしてそんな目で私を見る



「…生きているよ、ちゃんと」



言いながら赤司さんは私の肩に凭れてきた


彼の髪が頬を撫でてくすぐったい



「…生きていらっしゃるなら…
どうして、一度限りにしようとお思いになったんですか?」


「…人間は、俺たちとは違うからな」


「?」


「何度も吸えば、簡単に死ぬ」


それは、つまり


「…赤司さんは、その方を大切に思われていたんですね」


死んでほしくない

殺したくない


それってつまり、そういうことだろう



「…そうだな、大切だったよ」



優しい声色でそう言った赤司さんに、胸の奥に小さな針が刺さったような気がした


…あれ、何だ今の痛みは


「その子は他の人間とは違っていた

…俺にとって特別だった」


―――ズキン、



その子、という言い方からしてたぶん女の子なんだろう


そう思った瞬間に、また胸が痛んだ


「だから吸わなくなったんだ」


「…相手の方は、赤司さんのこと…」


「…さぁ、何とも思っていなかったと思うよ」

「え」


「向こうは俺のことをただの友人と思っていたみたいだったな

…でも物好きな子だった、俺が吸血鬼だとわかった後もずっと普通に接してくれたからな」


「…そうなんですか?」


「あぁ」


…それくらい、私だって



「…それに、向こうはもう俺のことは覚えていないみたいだから」


「え?」


「…たぶんだが、」


赤司さんが寄りかかっているせいで彼の表情はわからない


でも、きっとさっきのような優しい、でもどこか寂しそうな顔をしてるに違いない

何となく、想像しただけでまたズキンと胸が痛くなった


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