第46章 【サボる兄妹】
あたりが人気のない場所だったのは幸いだ。
「よしよし、よく我慢したな。」
力は本能的に抱きついてきた義妹の頭を撫でながら言った。美沙は泣きながら更に何か言っているが恐らく力以外にはわからない。
「わかってるよ、お前はそういう奴だからね。ありがとう。」
仲間達がキョトンとしている中、力は話を続けた。
「うん、それでも偉かったよ。」
それでも美沙は泣きじゃくって落ち着きそうにない。
「縁下、授業始まる。」
成田が呟いた。
「どうせ遅刻だろ、こんな状態じゃ気も入らねーわ。何なら俺ら全員サボっちまうか。」
田中がニヤっとして言う。
「龍、お前冴えてんなっ。」
「おいおい。」
木下が苦笑するが一歩間違えれば乗りそうな勢いである。力はんー、と考えて言った。
「お前らは遅刻してでも授業に行っといた方がいいよ。俺ら全員いなかったらバレー部の2年が何か企んだとかになって大地さんも困ると思う。あと、田中と西谷は出席日数に響いたら困るだろ。」
「お前はどうするんだ。」
成田が尋ねる。
「ごめん、俺はサボる。成田、聞かれたら調子悪いから保健室行ったって言っといて。実際行くつもりだし。」
「となると、」
木下が美沙をチラッと見る。
「妹さんもケテーイだな。」
「悪いなお前ら、本当に。」
「いーってことよ、大体いらねーことをしやがった奴が悪い。」
田中が言った。
「本当今回はお前が意外と冷静で助かったよ。」
「意外とは余計だ、こら。」
「龍、そろそろいこーぜ。力、美沙、また後でなっ。」
バタバタと去っていく仲間達を手を振って見送り、力はさて、と呟いて抱きついている義妹に目をやる。
「俺らも行こうか。」
義妹は力なく頷いてよろよろした様子で義兄に手を引かれ歩き出した。