第16章 ハートノカイゾクダン
それに満足気に頷いたマスターさんはそのままキッチンへと姿を消した。
「…マスターさんとキャプテンさんはあの服はきないのですか?」
その後ろ姿を見つつ誰とはなしに問えば、
「…。」
船長さんは答える気がないらしく、もくもくと食べ物を食していた。
この質問はしてはいけなかったのかなと首を傾げていると、隣でベポくんが声をあげて笑った。
「だってキャプテンやマスターまでこれじゃ、直ぐにわからなくなっちゃうよ!!」
「それじゃあダメなのですか?」
「例えば何かあってすぐにキャプテンに伝えたいことがある時にボク達に紛れてわからなくなったらこまるでしょ?」
クスクスと笑いながら言われたが、納得の行く答えでなるほどと感心する。
じゃあマスターさんは…?
そんなことを考えているのがわかったのか、食べる手を一瞬休めた船長さんが
「あいつはキッチンが戦場だからな。」
と短く返してきた。
なるほど、同じ土俵じゃないことが確かにすぐにわかる。
そう思うとその機能性に関心するが…じゃあペボくんのオレンジのつなぎは…?
そんなことをもんもんと考えていると、向かいの椅子が音もなく引かれた。
顔を上げて誰かと思えば先ほどまで一緒にいたペンギンさんであった。
食べ物が口に入っていたので会釈だけすれば、ヒラリと手が振られる。
「進みはどうだ。」
船長さんも気づいたようで、私を一瞥してからそう言った。
「残念ながら午後は俺が海図書くから本を渡してある。簡単な童話だ。恐らくトウカなら読めるだろう。」
「順調のようだな」
「あんたがすべてを教えてくれればな。」
どうやら私のこの世界の勉強についてらしく、そんな普通の会話の中からもペンギンさんは私の素姓を探ろうとしている体制だ。
別にペンギンさんになら話しても良いのではないかと思うが、船長さんは鼻を鳴らすだけで終わり、苦笑が漏れる。
「仕方ないよ、キャプテンは忙しいもの!!」
微妙な空気に浸りかけたところで、少し論点のずれたベポくんの元気な声がかかり、ペンギンさんは諦めたように食事の続きをしはじめた。