第2章 ヨソウガイ
途端に人がモーセの十戒のように割れ、その中でひときわ目立つ大柄の男に叫んだのだ。
その人はチラリとこちらをみやって大仰に立ち上がり、引きずられている私の前に座った。
「あぁ??…ガキか」
その顔はとても綺麗で、放たれる言葉とは合わない甘いマスクの持ち主だった。
「どうしますか?」
私を引きずる彼が聞けば甘いマスクの彼は少し斜め上をみて、そして私に視線を戻した。
その顔はなにを考えているのか全くと言っていいほどわからなかったが、後に微笑んだ彼に少し顔が熱くなるのを感じる。
もしかしたら、この人ならわかってくれるかもしれない。
微笑みを浮かべるその顔に見とれながら口を開きかけると
「あー、んじゃ次の島で売るから倉庫にでもいれておけ」
その甘いマスクから思いも寄らない一言が飛び出した。
「えっ?!」
驚いて息を飲む私とは違い、周りの誰も驚いた雰囲気が見られない。
「了解です」
私を捉えていた彼はそうにやりと言うと、また別の方へ私を引きずりはじめた。
「ま…待ってください!私はっ!」
このままではいけないと、必死に踏ん張りながら甘いマスクの彼にすがりつく。
こんなところで躓くわけには行かないのに、悲しきかな、出先から最悪の事態に混乱する頭を吹っ切るように大声をあげてみた。
「ごちゃごちゃ言うな!!」
食い下がろうとする私に辛辣な言葉と
「動けガキが!!」
「っ」
拳が振り下ろされる。
「お前に話す権利なんか与えてねえんだよ!!」
耳に響く罵声と痛みを我慢しながら必死に食い下がる。
このままでは私がこの世界にきた意味なく最悪の展開だ。
それだけは避けたかった。
「お願いします話を!!」
だけど
「黙れ!!」
世の中って甘くないのだ。
「ぐっ…。」
叫んだ私を襲ったのは頭の鈍い痛みと、腹部の衝撃…。
意識が朦朧とする中、手を彷徨わせて捕まり立ちできる何かをさがそうとした。
しかし、私の手は宙彷徨うこともなく、冷たい床に沈んでいるまま。
「やっと黙ったか。」
「さっさと連れていけ。」
薄れて行く意識の中で、私は再び引きずられているのだけわかった。