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空ハ青

第34章 ジョウホウヤ


少し高めの酒をシャチと飲み交わして居た時だ。

音もなく近づいたそいつは俺たちの向かいの席に何も言わず座る。

目線だけそちらによこせば

「私も良い?」

ダンが座って居た。

「うっわ!!気づかなかった!!久しぶりだなぁ!!」

「そうね、あなたは相変わらず見たいねシャチ。」

紅を引いた口が笑う。

俺はカウンターからグラスをもらうと、飲んで居た酒をついでダンの前においた。

「お前、こういううるさいところ嫌いだろう?なんできた?」

問えば一杯、酒を煽ったダンが着ていた上着のポケットを探る。

そこから折りたたまれた紙を静かに出した。

「確かめないとかなって思って。あなたたちをわざわざ探してきたのよ。」

こんな街だから、見つかりにくかった、と少し愚痴を零して。

「ダン開けて良い?」

隣りで眠そうにしていたベポが紙を突つく。

寝ていたかと思っていたから少し驚いたが、ダンがわざわざ持ってきた内容が気になったのだろう。

了承を得れば紙を広げ出す。

「今日の新聞に挟まってたのよ。さっき読んだばかりで、気づかなかったのだけど…」

前置きのようにそう言われ、ベポが開く紙を見つめる。

「トウカ…?」

開いたそれにベポが思わずと言った風に呟いた。

俺達は三人とも、その紙を凝視してしまう。

なんだ、どういうことだ?

「闘えない子を船上に置いたのだと思ってた。」

ダンが静かに言う。

周りの喧騒が酷いのに、こいつの声しか聞こえない。

「そうじゃないのね。それよりも、もっと厄介なものを乗せているのね。」

「厄介って…」

「否定はさせないわよ。だって、これ見て誰もが絶対思うわ。」

俺は立ち上がってその紙をぐしゃりと握りつぶす。

ベポも俺の意図を察したのか、もう眠そうではない。

あとに続くように立ち上がった。

「シャチ、ここは任せた。」

それだけ行って、店のドアへと歩き出す。

背後からダンの睨みつける視線を感じたが、それどころではない。
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