第33章 コエ
頭をグラグラと揺すられて目を見開く。
それと同時に喧騒が耳に入ってきて、私はわずかに眉を潜めた。
「大丈夫かお前。」
そう言ったのはまさに私の頭を揺らしていたシャチさんで。
顔に心配のふた文字が刻まれている。
「…だいじょうぶです。」
吐いた言葉は、まさに心ここに在らずで、私が密かに驚いてしまう。
「本当かよ?ダンの店行ってきてからずっとそうじゃん。」
「多分トウカはダンが男だって知らなかったから驚いたんだよね。」
「え、まだダン女装してんの?」
「違うよシャチ!!ダンは女装じゃなくて、ニューハーフなの!!」
私の頭の上でシャチさんとベポくんが会話をしている。
私は握ったスプーンを持ち直した。
ここは街の酒屋で、夕食時なためか喧騒がすごい。
そんな中で心ここに在らずでいられた私も凄いかもしれないが、それ以上に私の心を占めるものの方が衝撃的なため、仕方ないではないか。
ベポくんがここにくるまでに教えてくれたこと。
それは今二人がまさに会話している事柄で。
あの、大人の色香漂う店員さんが、まさかの男性だった、ということだ。
確かに、私は店員さんを見たとき、彼、と思わなかったのだから、きっと本能的に男性だとは気づいていたらしい。
おそらく巫女であるが故に気づいたことだったが、私は自覚がなかった。
最後、ベポくんが店員さんを男の人の名前で読んだ瞬間、それまでどこかモヤモヤとしていたものが晴れた。
そして、極め付けのあの声…。
思い出してうつ向けば、目の前の船長さんから不機嫌な舌打ちが放たれる。
「食うなら食え。ボーッとしてると全部食われるぞ。」
私の方を見るまでもなく、そう言われた。