第32章 マナザシ
「こいつに生活上で必要最低限のものを頼む。」
それだけ店員さんに言って、船長さんはあの椅子でどこからか取り出した本を読み始めてしまった。
そんなわけで、後ろには荷物持ちよろしくなベポくんと、放り出された気分の私と、激情を微笑みで隠した店員さんで店の中を回っている。
「そうね、あなたみたいな可愛げのある子はこんな感じの服がいいんじゃない?」
そういいながら手にとった服を見て、私は少しだけ困ってしまう。
それは決して機能的とは言えない柔らかいワンピースだった。
私がこれから生活する過酷な船上では、どう考えても使い勝手は良くなさそうだ。
「わー可愛い!!トウカ、これにしたら??」
店員さんの言葉にベポくんが同調する。
それに私は素直にはいとは頷けなくて、申し訳なくなる。
「すみません…せっかく選んでいただいたのですが、こちらの方が、船上生活向きかと…」
「そっか、そうよね。」
私が小さくなりながらも動きやすそうなパンツを取りつついえば、店員さんは残念そうにそのワンピースを棚にしまった。
とても上質だったそれは、多分船上生活出なくてもとてもじゃないが着ようと至らない代物だった。
どこまで本気で言っているのか、店員さんは決まってフワフワとしたワンピースを私に差し出す。
その度に首を振っていて、一着くらい頷くべきかと思ったが、やはり品物を前に頷けない。
どれも上質なのは見てわかったからだ。