第28章 ヤサシキヒト
怯えるようにマスターさんを見てしまった私に、彼は苦笑のようなものを見せたあと、私の頭に軽くてを乗せた。
「やっと起きたか。気分はどうなんだ?腹は?何食べる?」
目尻にシワを寄せてそう言われて、私の目からは涙が落ちた。
すすり泣くこともせず、ただボロボロと涙はこぼれてくる。
そんな私を見て、滲んだマスターさんは髪の毛をかき回す。
「どうしたどうした?若造一人で何を溜め込んだんだ?」
んー?と首をかしげながらひたすら私の髪を混ぜるので、頭がグラグラ揺れて同時に涙が散る。
あぁ何でこんなにもみんなさん優しいのだろう。
船長さんがどう説明したのかはわからないけれど。
心配してくれていた…。
ずっと、待っていてくれたんだ…。
「マスター!!そんなにしたらトウカの首ごとれちゃうよ!!」
「大丈夫だ、若いんだから!」
「もう髪もグチャグチャだし!!」
「大丈夫だ!」
「もう…!!トウカは温かいものが食べたいんだって!!体に力が入らなくて歩けないから、マスターちゃんと作って!!早く作って!!」
静かに泣く私の目の前で、二人がワイワイと掛け合いをする。
そんな光景を見て、クルーのみなさんが声をあげて笑った。
誰も私を攻めていない。
この状況を作ったのは、ここにはいないあの人で。
笑い声の渦の中で、胸が少しだけ温かくなった。