第26章 トリカゴノナカ
私は取り返しのつかないとことをしたのだと、余計に涙があふれる。
「お前が、そんなにも俺たちを信頼してないってわかって、俺はだいぶ面白くない。」
そんな時に聞こえた言葉に、私は少しだけ目を見開いた。
「お前に傷つけられたなんて、誰も思っちゃいねぇ。」
一雫、頬から滑り落ちる。
「早く目を覚ませ。これ以上俺を怒らせたいのか?」
ブンブンと首を降って否定する。
一言一言のセリフがどうしようもなく不機嫌なのに、全部優しく心に響く。
すっと、頬を硬い手が滑ったと思うと、涙の向こうにもう人影は消えていた。
しばらく放心状態で、仰向けになったのに、私はしっかりと体を起こす。
「行くの?」
事の終始を全部見ていたであろう、もう一人の私の声が響く。
小さく頷くと、私と同じ顔の、しかしまとう雰囲気が冷たい彼女は微かに微笑んだ。
「好きになさい、トウカの。私はまた待ってるから。あなたがここにきてくれる事も、あなたが私を呼んでくれることも…」
微かに笑む顔が儚くて、心が苦しくなったが相手の思いが私にダイレクトに伝わる。
彼女は、私自身だから。
佇む彼女に泣き顔で微笑んで、そして一言。
「いってきます」