第3章 サマヨウイシキ
薄目を開ければ驚愕の表情の彼ら。
どうやら無意識のうちに自己防衛したらしく、少し体がだるい。
早く彼らには立ち去って欲しいのに、よっぽど驚いたのかそのまま凍りついたように動かない。
この沈黙が耐えられなくて視線を移そうとした、その時。
「…何してんのさこんなとこで?」
色気を含んだ、女の人の声が聞こえた。
「あ、アリスか…何でもねぇよ。」
この船の人なのか、二人がその声の主を振り返って嘆息した。
先ほどの先の見えない怖さに怯えていた身としては彼女は救世主に等しい。
やっとホッと息をつくと
「そう?なら船長がよんでたわよ。」
「あーそーだったわ」
怪訝な声音のそれに答えて、二人は倉庫の中で何かを探し当てるとドアの向こうへ消えて行った。
しかし、漏れる明かりはそのままだ。
未だ、あの二人を追い返してくれた彼女が、そこに佇んでいるからだ。
もしかしたら、この人ならわかってくれるかもしれない。
シルエットを見る限り、やはりグラマラスな女の人だとわかり、余計に期待が膨らむ。
アリスと呼ばれたその人は暫くしてから高々とヒールの音を響かせながら私の前にやってきた。
この人なら、そう思い懇願の目を向けたと同時に、私の頬に熱が走った。
信じられないような、裏切られたような消失感が私の中で駆け巡る。
「…何色目使ってんのよ。」
まるで怒りを抑えたようなその声に息ができない。
「この奴隷風情が!!この船の女は私だけよ!!何よ生意気な目!!この程度の胸で男に喜ばれた位で良い気にならないでよね!!」
その言葉を聞いて、私は理解した。
この人ならわかってくれるかもしれないではない。
この人こそわかってくれない人だ。
後悔など先に立たずに、この日から私にとってさらに地獄の日々が始まった。