第6章 ”オカミさん”
「こんな状況なのに、何で学校になんて…。」
「こんな状況だからよ。学ぶ権利があって、それを阻むなんてしちゃいけない事だから。でも”権利”が有るだけで、行くかどうかは貴方が決める事よ。」
言い終わると、湯飲みを手にしてオカミさんはお茶を飲んだ。
勉強は嫌いだ。でも数学は好きだし、今の数学はもっと面白い所にきてる。行かなかったら、そこは習えなんだよね…。それにーー
「その学校って、他の国の審神者も通えるんですか?」
「今ある三国、これから増えていく国に居る教育を受ける権利がある子達は同じ所に通って貰うの。流石にクラスは分けられるけど。」
じゃあ、運が良ければ天音にも会える。久しぶりに天音に会いたい…。
勉強、特に英語は頑張るしかないけど…。それでも行きたい理由はあった。
「あの…学校…。」
「行きたい?」
はい。と頷きながら答える。オカミさんは笑顔で頷いて、それも登録しておくと言った。
「食料が無くなったからここに来たのよね?」
「何でそれを…。」
それについて一言も口にしてないのに。なんだろう…背中がぞくっとした。
「自分が担当する本丸の事は理解しておかないとね。それに他の本丸の子達もそんな感じで来るからね。」
言いながら、ウチの手元にペンと注文書を寄越した。
「これに書けば良いんですか?」
「そうよ。早くて今日の午後に届けるようにするから、その時に学校のパンフレットや行き方を同封しておくから。」
「あ、有難うございます。」
書き終わった注文書をオカミさんに渡して、ウチ等は立ち上がった。胡坐を掻いてたから別に足は痺れてないけど、荷物が多いし、重たい…。
「一つ、袋寄越しなよ。そんな余分な肉しかついて無い腕で持ったって、何時まで経っても本丸に戻れないし。」
教科書が沢山入っている紙袋を、加州は持った。そんな事言うなら持たなくてもいいんですけど…。っていうか、持てるよ!
座敷から出れば、短刀ちゃん達がそれぞれ欲しい物を手に取って待っていてくれた。
「お待たせ!…小夜は要らんの?欲しいもん。」
小夜だけ手には何も持ってなく、いい。と言ってそっぽを向かれた。
あっ、そっか…。特に問い詰めずに、食料と欲しい物の値段を払い、万事屋を後にした。
外に出たから、外食でもいいかと言う事で、お昼は町で食べる事にした。
