第5章 今剣 そして、二度目の出陣
「フーン。よく取れたね。」
鼻で笑いながら、こちらに来る。突然投げて来るから、もう少し反応が遅れたら、落とす所だったんですけど…。
ジドーッとした目で見てやるが、別に気にしてないのがさらにイラッときた。
「…っていうか、これ、何処に付けるの?鈴なんて…。」
疑問を口にすれば、
「自分で考えなよ。」
予想通りの答えが返ってきた。ですよねー!
この刀装とやらを彼らの何処に付けるか、何となく一つだけ案はあった。
「加州、本体貸して。」
「はあ?」
目を見開いて見下ろしてくる。目が、コイツ何言ってんだと語っている。
「大切に扱うから。」
「それ当たり前でしょ。…はあ…。」
溜息を吐きながら、渋々といった感じで、腰に差している本体を貸してくれる。
ウチは胡坐を掻いて本体を横にする。持ち手の先端、そこに刀装鈴の紐が付けれないか探してみる。
「無理やりになっちゃうけど…。」
先端に穴があったら通したかったのに、なかったから括り付ける事にした。これなら大丈夫だ。
加州に本体を渡す。チリンといい音が鳴る。
黙って受け取る彼はそのまま、腰に差した。もう一つあるけど…。
「もう一つは?」
刀装部屋から出て行こうとする彼の背に話しかける。振り返って、目が合う。
「今剣に付ければ。」
と言って、先に行ってしまう。
今更だけど、今剣とウチとの接し方がなんか違うような…。まあ、違うのは当たり前だけど。
今剣に微笑むように笑う加州の顔を思い出す。宜しくした以来見ていない。大体は無表情しかウチに見せないし…。
「今剣と仲良くなったんだね。」
小走りに彼の隣に行く。赤い目がウチに向けられる。
「何処かの誰かよりも、良い奴だし。それにーー、」
突然歩くのを止める。釣られてウチの足も止まる。
「子供は好きだよ。子供と仲良くなるのは得意だし。」
口角が上がる。その顔がとても綺麗で、声が出なくなった。風が吹いて、桜が舞う。それもあって、さらに絵になる光景が出来上がった。
「何、突っ立ってるの。早く戻らないと今剣がふて腐る。」
元の無表情に戻り、そそくさと戻ってしまう。その歩幅は大きくて、付いて行くのに精一杯だった。