第5章 今剣 そして、二度目の出陣
「何この部屋…。」
明かりが点いてないから、薄暗い。開いた扉から流れてくる太陽の光で、祭壇の鏡が反射する。
中に入って、見渡して見る。加州もウチの後に続いて部屋に入って来る。そして、部屋にスイッチがあったのだろう、部屋に明かりが点く。
「刀装部屋。出陣する刀剣達に付ける装備みたいな物を作る部屋。」
ウチの隣に並ぶように歩み寄って来る。
「その刀装って、力使うの?」
「使わない。これを作るのは俺達刀剣だって。こんのすけから聞いた。」
加州はズボンのポケットに手を突っ込み、何かを取り出す。それは青銅色の大きな玉だった。その玉をウチに渡してくる。
「何これ…。」
渡されたそれを光を当てるように翳してみる。薄らと小さな式神に似たモノが見えた。刹那、急にそれが眩しい光を放ち目を瞑った。
次に目を開ければ、手にあったあの大きな玉は、チリンと音をたてる同色の鈴に成っていた。
「本当に…何これ…。」
呆気に囚われるしかしかなかった。驚いた顔のまま、加州を見上げる。彼も、両目を開いて驚いていた。
「審神者が持つと形が本当に変わるのか…。」
ウチの手の中にある刀装を取り、さっきまでウチがやっていたように、光に翳す。
「どういう事?」
「アンタが寝ている間に、こんのすけから俺達の武具に成るこれを聞いた。その時に作った時は大きな玉だけど、審神者によって審神者が触った後、形が変わるって言ってんだ。」
手に持った刀装をウチに返しつつ、話を続ける。
「こんのすけ立ち合いの下で、一つ作ってみた。それが手に持っているやつ。」
まじまじと見て、祭壇に目を移す加州。手の中の物は涼しげな綺麗な音をまた一つたてる。
「もう一つ、作ってみるか…。」
と言って、祭壇の前に赴く。鏡に加州の顔が映る。
祭壇上には、刀装に必要な資材が置かれている。どの資材も、鍛刀に使われるのと同じのだ。
鏡に手を翳し、スライドさせる。そうすれば、置かれている資材がそれぞれ光となって、鏡の中に吸い込まれる。
「え…。」
どういう原理なのか分からない光景を目にして、驚くしかなかった。
鏡がまた反射する。次の瞬間、鏡から吐き出されるかのように、一つの玉が出てくる。それを難なくキャッチする加州は、そのままウチに投げて寄越す。
玉がウチの手に触れた瞬間、また鈴と成った。
