第5章 二人の夢*黄瀬*
「お疲れ様でしたー!」
今日も部活が終わった。
「名前、今日もやっていくの?」
「うん、もう少し練習していくー。先帰ってて!」
他の部員が帰った後、シュート練習するのが日課になっていた。
黄瀬くんに触発されたのもあるけど、1年でレギュラーとして選ばれている自分をもっともっと高めたい。
「んー…やっぱりアウトサイドからのシュートは苦手…。」
あーだこーだと色んな方法で試してみる。
「あれ?何してるんスか?」
振り返ると体育館の入り口には憧れの人がいた。
「黄瀬くん!どうしたの?」
嬉しさよりも驚きが勝り、目を丸くしてしまった。
「教室に忘れ物したんで取りに戻ろうと思ったんスよ。…シュートの練習スか?」
彼は靴を脱いで、体育館に入ってきた。
初めて隣に立った彼を見て、私は思わず
「おっきいねー…。」とポカンとしながら呟いた。
私が見上げるほど背が高い男子はごくわずかで、単純に感心してしまった。
「キミ面白いっスねー!」
彼はくすくすと笑った。
普通なら小馬鹿にされているようにも感じるのだろうけど、彼のオーラは全くそんな風に思わせなかった。
「名前何ていうの?」
「苗字 名前です。私、一度黄瀬くんに助けてもらったんだよ。階段で。」
「あぁ!あの時の!バスケしてるなら、なおさら怪我しなくて良かったっス。」
「あの時は本当にありがとう!何かお礼がしたいんだけど…。」
彼はんー…と少し考えたよう。
「今は思い付かないから、また今度何かお願いするっスよ、名前っち!」
「名前!?」
「だって、名前って名前可愛いっスもん。」
名前とはいえ、可愛いなんて男の子に言われたのは初めてだった。
一気に顔が熱くなるのを感じた。