第42章 諸刃の刃の切っ先で
そして、冒頭に戻る。
冷凍野菜を使った甘口カレーは、思いのほか三人に気に入られたらしい。
もりもり、ばくばくといった擬音がつきそうな、いい食べっぷりだった。
なお、肉がなかったので、エドがティノからもらったフェイクミート(大豆などの植物性原料らしい)を投入したが、普通に、肉であった。
さすが白米! さすがリンゴとハチミツ! バーモ○トカレー!
とは思ったが、お金を払われるのは全く想定外だった。
「すみません、日本円は持ってないので」
「ユーロも円もいいですって!」
「僕、財布がありません……」
「ちょ、泣かないでライヴィスさん! トーリスさんもバッグ漁りやめてください!」
「エドだけ抜け駆けは許さないよ!?」
抜け駆けとかないから! とバルト三国において自分だけがツッコミに回っている事実に慄きつつ、どうしたもんかと頭を抱える。
「プロの料理人でもなんでもないですし!」
「きちんと対価を払いたいだけなんです。公子さんの善意にあぐらをかいていたくないんですよ。それにプロの味でしたよ? カレーライスという存在にもっと早く出会いたかった……いやしかし今までとっておいたから公子さんに調理してもらえたのか……」
エドの表情は真剣そのものである。
うんうん、とほかの二人もうなずいている。だめだこりゃ。
一歩も引こうとしない彼らに、私はある提案をした。
「では、お金のかわりに、他の写真を見せていただけませんか?」
カレーセットには、レシピやアレンジのメモを撮影した写真が同封されていた。
たぶん当日(細くて美しい筆跡からして)菊か誰かが書き、撮って残しておいたのだろう。
なら、プレゼント交換会自体を撮ったものもあるはず。
エドはそんなんでいいのか? と訝りながらも、とりあえずと手元のノートパソコンを操作し始めた。
写真データを準備してくれているらしい。
そして、“それ”が現れた。