第41章 暗鬼による確信による、
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後部座席に転がり込んだ公子を確認し、エドァルドはトーリスに目配せする。
トーリスは一度頷くと、車を発車させた。
静かに動き出す車内で、彼女がほう、と息をつくのが聞こえた。
フロントミラーから見える彼女は、緊張という緊張がとけ、完全に脱力しているようだった。
表情筋も休み中らしく、ぽけーっとした顔で口も半開きである。
無理もない。
今までの経緯からして、彼女にとって、この車内は最も安全な場所になったはずだ。
それは、エドァルドたちが信頼に値する人物だから。
エドァルドは公子をよく知らないが、きっと、公子はエドァルドをよく知っているから――
そう思うと、なんとなく誇らしいような、どこかフワフワした嬉しさを覚える。
――だが、すぐに罪悪感が重くのし掛かってきた。
「エアコンきつくないですか?」
「……あっ、はい! 大丈夫です!」
トーリスの問いに、我に返ったように公子が答える。
自分たちは、彼女を”助けた”とはとても言えない。
それに、あの人物。
以前からマークしていた、ロシアの諜報員だ。
エドァルドたちが入手した情報を知っているのだろうか?
それとも、”数値“にありありと現れてしまったんだろうか?