第41章 暗鬼による確信による、
通話が終わったのか、エドは携帯をポケットに戻す。
その目はスパイ(?)に釘付けだ。
そんなエドを知ってか知らずか。
男は歩みを止めることもなく、徐々にその背中は遠のいていく。
ほとんど見えなくなったところで、今度は車の音が近づいてきた。
「迎えが来ます。行きましょう」
エドが私を見て言った。
はい、と反射的に返事をしてしまったが、ふと疑念が頭をかすめる。
エドと電話の相手とのやりとりは、まるで私との遭遇を“予測”し“備えて”いたようじゃないか――?
エドは木の陰から身を出し、そのまま雑木林の出口まで歩きだした。
私も慌てて後を追う。
後ろをついてくる私を気にかけ、エドがふいと視線をよこした。
ちょうどばちっと目が合う。
そのとき、彼の瞳が恐怖を宿していることに気づいた。
「え……」
思わず声が漏れたが、エドには聞こえなかったらしい。
再び前を向いたその目が、何かを見つけて瞬いた。
雑木林の入り口には、黒い普通車が停まっていた。
ようやく入り口に辿りついた私たちを、ゆっくり開くドアが出迎える。
運転席でハンドルを握っていた人物。
その彼は、たった今生唾をのみこんだような顔で、片手で助手席のドアをあけたところだった。
「無事ですか!?」
「トーリス!」
「早く!」
エドに急かされるまま、挨拶をする間もなく私は車内に転がり込んだ。