第39章 錯綜と進む針と
唐突に、声を低くしてアーサーが言った。
問いただすような、責めるような。
そんな声色に、ぴたっとアルフレッドの動作がとまる。
アーサーを見ると、俯きがちになって腕を組み、壁にもたれていた。
しばしして、アーサーが緩慢に顔をあげる。
その瞳から、アルフレッドだけでなく、自分自身をも責めている声だと、アルフレッドは思った。
「なんのことだい?」
「とぼけるな。マシューになにかあったんだろ」
厳とした声で、アーサーが告げた。
意志に澄み切った緑眼は、持ち主の思考を読むことを許さない。
「……へー、さすがだね」
彼の情報網を侮ったつもりはない。
隠し通せるとも、思っていない。
しかし、一日も経たない中での発覚は、アルフレッドの予想していないものだった。
「……」
なにを、言うべきなのだろうか。
はぐらかそうだとか、言い逃れようだとか、そういうわけではなく。
ひたすらに、わからなかった。
アーサーの半ば睨みつけるような、鋭利な視線を受けながら、アルフレッドには持つ言葉がなかった。
沈黙に口をつぐんだままでいると、突然その口の中になにかが押し込まれる。
「んぐっ!?」