第38章 ゼロ地点の結界より
自分たちは行方不明のような扱いになっているだろう。
戻る手立ては今のところゼロだ。
数日――いや、もっと戻れないかもしれない。
ぴくりと反応をみせたヨンスが、思案顔のまま言った。
「湾もきっとびっくりしてるんだぜ」
「well……電話で来るって言ってたし」
「兄貴は俺と香が好きすぎるからなー菊が大変そうなんだぜ」
「わかる」
「……」
「……」
空気が重たくなっていく。
湾がいらぬ責任を感じていなければよいが、彼女のことだ。
少なくとも、“びっくりする”程度ではおさまっていないだろう。
ため息をつきたい気持ちで、香は外を眺める。
「やっぱ、外も調べなきゃならない系じゃね」
「俺は反対なんだぜ」
珍しく、神妙にヨンスが言った。
少し驚いて、香はヨンスに視線を戻す。
「But、ここがどこかもわからないし」
「ん。いずれは調べる必要があると思うんだぜ。でも、せめて俺がある程度情報を集めてからにしてほしいんだぜ」
「……You're right」
真剣な声と瞳に、そう答えざるをえなかった。
彼なりに責任を感じた上での、心配なのだろう。
ヨンスがPCで作業し、香が外を調査する、そう考えていたが、
――見張ってないと絶対無茶するな、こいつ
そう考えを改めた香だった。