第33章 閉じ始める序説まで
突然、アントーニョが100%笑顔のままバターンと倒れた。
やりきったかのような笑みに、思わず脈拍を確かめかける。
アーサーは慌てて駆け寄ると、しゃがみこんで泣き出しそうな声をあげた。
「お、お前、しっかりしろ! ばかぁっ! 死ぬんじゃねぇっ!!」
「大丈夫だって坊ちゃん、寝てるだけ」
フランシスがなだめるように言うと、え? とアーサーは涙目をしばたいた。
確かに……アントーニョの胸は上下しており、顔――寝顔はクマがあるものの、安心しきっている。
「この三日間寝てないんだから、当然か」
「三日間!?」
つまり――ロヴィ救出のためにテレポート(川へダイブ)してから、三日たっている、てこと?
「とりあえず部屋に戻ろう。いろいろ話すことかあるみたいだし……ね」
フランシスは意味ありげに目配せしてきた。
まるで、なにかを知っているかのように。
「すぐそこで、皆待ってるから」
眩しそうに頭上に手をかざし、そう続ける。
太陽が地平線から少しずつ顔を出していた。
海に零れた光は乱反射して、水面でぱちぱち輝きを弾けさせる。
泣きたくなるくらい美しい朝焼けだった。
“戻ってきた”――やっと、そう感じた。
アントーニョを背負ったフランシスに連れられ、私たちは港をあとにした。