第33章 閉じ始める序説まで
「アーサーさんもです。アーサーさんがいなければ、ここにちゃんと帰って来られたかわかりません」
「うん、俺もそう思う!」
突然回ってきた話題と、フェリちゃんの無邪気な同意に、
「え」
アーサーは明らかな戸惑いを見せた。
面と向かって褒められた経験の少ない人が、思いっきり褒められた、みたいな顔だった。
「そうなん?」
驚いた親分は、はたとアーサーに目をやる。
見つめられ、「う」となぜか後退りするアーサー。
ダメ押しとばかりに、フェリちゃんがうんうん頷く。
フランシスもなぜか「さすがじゃないアーサー」と口をはさむ。
アントーニョは、なぜか申し訳なさそうに眉を寄せ、涙を増量させた。
「今まで……お前のこと、メシマズクソ眉毛くたばれいつか殺すと思ってたんけど――」
「て、てめ――」
「有能で頼りになるし、そんなにボロボロになって……ロヴィのために頑張ってくれたんやな……」
「……っ」
同時の罵倒と賞賛に、アーサーは反応速度が間に合っていなかった。
ただ顔をかーっと赤くし、まごついている。
ひとつ言っておくと、アーサーの服が切れたりボロボロになっているのは、窓ガラスをぶち破りダイナミック入退室したせいだと思う。
しかし、アントーニョの手放しの感謝に、アーサーはまるで未知の物質と相対したような面持ちだ。
「べ、別に、俺は――っておいいいぃぃ!?」