第31章 He want not to stay,
「おわっ!?」
――はずだったが、それはほとんど体当たりだった。
「よかった! また会えて本当によかった! どこも怪我はないですか?」
「今ので打撲した気がするぜちくしょー」
軽口をたたくロヴィーノに、思わず笑みがこぼれる。
(おそらく照れ隠しだろう)苦々しい顔には生気が宿っており、体を見回してみたが怪我らしい怪我は全くなかった。
むしろ、いなくなるときの顔色と比べて、ずっとよくなっているような気さえする。
普段と変わらぬ姿のロヴィーノがそこにいた。
異なっている点があるとすれば、簡易な手錠に拘束されているという点か。
出血箇所もない。
ん……? じゃああの殺人現場の血痕は誰のものだったんだ?
「お前こそ大丈夫かよ、随分うなされてたぜ」
「そうだったんですか? 全くもって大丈夫です! ロヴィーノ様にまた会えて元気百倍です!」
「なあ……からかわれてるのか俺?」
かしゃり、と音がして、音源の手元を見る。
するとやはり、私も手錠をかけられていた。
さっきロヴィーノに抱きつけなかったのはこのためか。
あたりを眺めると、目覚める前と同じような光景が広がっていた。
無味乾燥な牢屋、今度は椅子もなにもない。
唯一ある扉には、上部に小さな窓がついているが、その先は真っ暗でなにも見えなかった。