第8章 カナちゃんの誕生日
そんな私達に、ゆらちゃんは片手に式神を握りつつ眉を吊り上げ口を開いた。
「あの2人のように全裸で妖怪に襲われとうないやろ!? 特に有永さんは1度妖怪に遭遇しとるんや。あの時は助けが来たけど次はどうなるか判らん! 絶対、覚えなあかん!」
いや、何度も遭遇してるけどね。
私は奴良家で出会った妖怪達を思い出す。
と、隣に居たカナちゃんは自分の手首からゆらちゃんの手を外すと、片手を横に振った。
「ちょっと私やることあるから、またの機会にね?」
「仕方ないなー、じゃあ、有永さんはこっちや!」
ゆらちゃんは、掴んだままの私の手首を引っ張ると、巻さんと鳥居さんの横に連れて行った。
「ハイ、じゃあもう一回最初から通すで!」
「疲れたよぉ~」
「もうちょっと休ませて~」
「休んでて妖怪に襲われたらどうするんや! 有永さんは、私の真似をするんやで! ハイ!」
「学校で襲う妖怪いないって~」
「ゆらちゃん。厳しすぎる~」
そう言いつつも、巻さんと鳥居さんはゆらちゃんと同じ動きを繰り返した。
私もゆらちゃんの動きを真似してみる。
両手を上げ腰を捻り、片足を前に出す。
「よっ」
これは一見地味な動きだが、なかなか体力を使う。
巻さんと鳥居さんが悲鳴を上げるのも判る気がした。
するとゆらちゃんの鋭い声が飛んできた。
「有永さん、違う!! ここはこうするんや!」
「こう?」
「手の角度が甘いっ! 恥ずかしがらんできちっとこういう構えをとるんや!」
「んっ」
腕が引き攣るーっ
腕を上げたまま、足腰を動かすのはきついっ
と、屋上の出入り口から清継君のハイテンションな声が上がった。
「やってるね! 諸君! 陰陽師の花開院さんに教わる清十字怪奇探偵団諸君の姿! 素晴らしい! 花開院さんに頼んだ甲斐があったというものだよ!」
「清継ー! あんたが頼んだのね!」
巻さんは、余計な事をっ! と言いたげに眉を吊り上げ清継君に詰め寄り、胸元を掴んだ。
そんな巻さんに、清継君は不可思議そうな顔をして首を傾げる。
「どうして怒ってるんだい? マイファミリー。陰陽師の技が習えるなんて滅多に体験できない事だよ? ははーん。さては、修行よりも早く妖怪に会いたいんだね。ふふふ。そんな巻さんにピッタリの情報を仕入れて来たんだよ。知りたいかい?」