第2章 思わぬ出来事
オーナーは不思議な人だとは思っていたがまさかここまでだとは夢にも思わなかった。
どうやらこれは夢ではないこと。
時間を戻す、進めると言うことはごく一部の人間にとって日常茶飯事でありその一部にオーナーが含まれていること。
そして私とクロサワコーキはオーナーの気まぐれにより此処に記憶を持ったまま飛ばされたらしいこと。
今は昨日の私からすれば過去ということが告げられた。
「アズサちゃんの研究は興味深いからねーこっちでもそれして色々話聞かせてよ」
悪戯に笑うオーナーに突っ掛かったのは私ではなくクロサワだった。
「はぁ? 俺は戻って仕事やりたいんですけど」
真面目か!
納期ギリギリの仕事から抜け出してラッキーと思っていた私が少し恥ずかしい。
「大丈夫。2年後にはまたあっちに返してあげるから。
それにクロサワ君だってアズサちゃんと一緒にお互い意識して高校生活したかったんでしょ?」
クロサワは俯いていた。
「これ、箱の中に制服やら教科書入ってるから使って。あと君たちのスマホ、没収。
他にはパソコンも。クロサワ君の鞄の中のノートPCもね。
テレビは、ないか。とりあえずこの時代にそぐわないもの全部没収」
私の本棚で埋め尽くされた書斎がまっさらになった。
ここ数年で買った仕事関係の雑誌、書籍。好きな小説家の文庫本。
ほぼ高校卒業以降に出版されたものだかららしい。
DVDとCDはパソコンがないので使い物にならない、もってけドロボー、と分別せず全部箱詰めしてオーナーに差し出した。
泣き落としで守れたものは去年買った冷蔵庫と洗濯機を含む家具と衣服だけに近かった。
落胆した私はクロサワにもぬけの殻となった書斎を自室として使わせることにした。
お互いの実家には誤魔化してオーナーが私たちの世話をしているということになっているらしい。
クロサワの家も私の家も父親の海外転勤に家族がついていく形になってるらしいし、実際にそう、らしい。
私の父親、海外に転勤するなんてほぼない職種なんですけど。
それはまあタイムワープができる世の中ですもの不思議はないです。そういうことにしましょう。