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言われてみれば、単純で。

第8章 別稿 私の気持ちは、難解で。


如何に自分が言葉を使うという事に対して知識が足りなくて、経験も足りない事は重々承知なのです。
新しい教室に慣れぬまま桜の木を見ていたら私はいつの間にか委員会選抜に推薦されており、その中でも一番苦手な体育委員という役職を言い渡されていました。
友人は私に対して、お話も耳に入れようとせず外ばかり見ていたので担任の先生から目を付けられたと言っていました。
桜が舞い散る校庭が美しいと、そう考えていただけの私の何が気に入らないのでしょう。

しかし前期、即ち6ヶ月だけ面倒に巻き込まれる位なら仕方ないと思っていたのです。
学校という共同生活をする場所において役職をいただけるのは光栄な事だと自分に言い聞かせ、自分を騙しました。
この役職が私の生活を変えたのはたった6ヶ月だけではないことをその時は知りもしませんでした。

委員会があると言い渡されたのは余りにも突然でした。
その日の私は疎らになってしまった桜を廊下から見下ろしていました。
この時期が終わると私の好きな桜色の絨毯も無くなってしまい道を歩くのが少し寂しくなるのです。
そんな事を考えて舞い散る桜の流れを観察していると友人の一人が私に委員会に行かなくていいのか訊ねてきました。
彼女の言葉で私は重大な役職を頂いていた事を思い出し、規則違反とは分かっていましたが廊下を駆け抜けます。
部活に向ったり下校したりと外に向かう人の波を掻き分けて委員会の教室にたどり着けば、私が最後の一人だったようでした。

「やっと来たか」とまで言われ、少し自分の顔が紅潮したのが分かりました。
ひとつだけ空いた席に座ると隣に居た少し背の低めの男子生徒がこちらを見ています。
背丈が低く、顔も幼い男の子。同じ学年かと思ったのですが、よく見ると詰襟につけた校章の色が一つ上の学年、3年生の色である事に気付きました。

彼は私の方を見て、小さな声で話しかけてきます。それは、会議中の暇を潰すための会話なのでしょう。
名前を訊ねられ挨拶をされ何故か握手を求められました。
ただ席が隣になっただけの相手に対し其処まで丁寧に自己紹介をする人は初めてみました。


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