第1章 おれのきもちはフクザツで。
「キョーちゃん、お勧めの本ありますか?」
「これですかね。恋愛小説です」
「ふーん。なんでこれ?」
「先輩が 愛が足りないと仰っていたのでこれで補っていただこうと」
確かに言いました。
でも俺はキョーちゃんからの愛が足りないだけです。
冷たすぎるんだよ。言ってないけど。
とりあえず、そのおすすめとやらを読んでみましょう。
「…これ、すっげぇどろどろしてるんですけど」
「そうですか? この作家さん、心理描写すごくないですか?」
「抉られるレベルにね」
「先輩。どうですか? 愛、補えました?」
補えるわけないよ。こんなどろどろ話で補えない。
本なんて読まずに彼女と話してた方が補えたと思ったのは
図書委員の仕事が終わり、彼女が俺に「また明日」そう言ってからだった。