第4章 俺と君は、曖昧で。02
「丹羽先輩。意外とこだわり派?」
珈琲豆を取り出すとキョーちゃんが興味深く此方を見ていた。
意外は余計だろうと思ったけど、日頃のキョーちゃんの前での行動を振り返るとそうでもなかった。
「時間あるときはね、ちゃんと豆挽くよ。
インスタントもインスタントで好きだけど今日はお客さま来てますから」
「私はお客さまなんですね」
「うん。普段男友達くらいしか来ないからね」
「意外ですね」
キョーちゃんに然り気無く普段は女の人を家に入れないアピールしたつもりだった。
それなのに彼女は珈琲に夢中で俺の話はあまり聞いてない。
珈琲を入れてケーキとお皿を持ってキョーちゃんのいるソファの前のローテーブルに並べた。
ケーキの箱を開けると、スタンダードにショートケーキと生チョコレートケーキ。
そしてチーズケーキとガトーショコラ。
「キョーちゃん、もしかしなくてもチョコレート好き?」
「あ、はい。わかります?」
「まあ分かりますよ、これ見れば」
「先輩甘いの駄目でした?」
「いや、好きだよ。すっげー甘い食べものに珈琲って最高じゃない?」
「私もそれが好きです」
キョーちゃんは逆だね。
いつもは冷たいのにたまにめっちゃ優しくなる。
こういう好きは分かるんだよな。
美味しいものは好き。楽しいことも好き。かっこいいものも好き。
じゃあ、彼女は、どうなんだろう。
その日はだらだらと話をしてお昼と夕方にもケーキを半分ずつ食べた。
夜になると彼女は「また来週」そう言って帰って行った。
キョーちゃんのいたはずの部屋は少し寂しくて
いつもなら一人でいるはずのこの部屋が随分と広く感じた。