第2章 あの日から
茶室にて、キキョウおばさま、イルミさん、私の3人でお茶を飲む。
今日の茶菓子はイルミさんのお土産で毒は入ってなさそうだから、安心して食べることができる。
以前、おばさま特製手作りクッキーを食してひどい下痢をしたので、用心しているのだ。
ちなみに私の食事には、毒を入れないこ とを約束してもらっている。
そういえば、とイルミさんが私の方に向き直った。
「ミモザの念能力、名前はなんていうの?」
「あのですね、名前は・・・」
私はこほん、と咳払いをした。
「とめどない夢想。またの名をムーピーゲームといいます」
「ふーん。特質系だったよね。今見せてほしいな」
「じゃあ、ちょっとだけ。手を」
私はイルミさんのしなやかな手を握り、能力を発動した。
瞬時に、周りの風景が変わる。畳を敷いた茶室から、色とりどりの花が咲き乱れる花畑へと。
キキョウおばさまの 姿は、見えなくなった。
おばさまのいる現実世界では、手を繋いだ私たちが黙って向かい合っていることだろう。
「見事な花だね。本物みたいだ」
「ここでは全部、本物です。現実ではありませんが。行きたい所へ行けますよ。平たく言うと、好きな夢をみれるんです」
「確か、眠ってる間も使えるんだよね?ぐっすり眠れて体調が良くなるんだったよね。ねえ、ミモザ、今夜一緒に眠ろうよ」
「え?」
驚いた拍子に、能力を解除していた。
「それはちょっと・・・イルミさんと一緒に寝るなんて、とんでもないです」
「頼むよ。俺、今日は仕事でくたくたなんだ。早く疲労回復したいんだよ。それじゃ今夜、部屋で待ってるから」
助けを求めてキキョウおばさまに視線を送ったところ、
「いいじゃないの、ミモザちゃん。イルミのこと、よろしくね」
笑みを返されたのだった。