第11章 終焉
「こわ……い、よ……死にたく、な……いよ」
「アロイス、アロイス!! 誰か、医者はいないの!? ねぇってば!!」
無残なホールの中に、彼女達以外の生き残りがいるはずもなく。静かな部屋に、アリスの悲痛の叫びだけがこだまする。
「アリス……アリス……――」
「何? 私は、ここよ」
もう力の入っていない、彼の小さな手を彼女はそっと握りしめた。
「愛……して……よ」
「アロイス?」
「僕を……僕、だけを……愛して……よ……アリス」
一筋の涙が、彼の瞳から零れる。
「アロイス……?」
彼の口元は、もうそれっきり一言も発しなくなった。クロードは無理矢理アリスをアロイスから引き離すと、彼女を抱き上げシエルを見つめた。
「私は彼女を、甲板へお連れします」
「アリスを離せ、クロード・フォースタス」
シエルは迷いなく、クロードに銃口を向けた。
「この茶番劇は、お前達の仕業か?」
「とんでもない……。こんな、死者を生き返らせるなど……悪魔の趣味ではありませんよ」
「何故、アロイス・トランシーを見殺しにした? アリスの言葉が正しければ、お前はこいつと契約していたんじゃないのか?」
「悪魔にも……魂を選ぶ権利があっても、いいとは思いませんか?」
「なんだと……?」
クロードの手が、アリスの頬をゆっくりと撫でて優しく見つめる。