第5章 予感
「リンス、カレン」
セバスチャンが不意に腕を解いたのを合図に、アリスは二人へと姿を晒し言葉を放った。
「アリス様。ご無事でしたか」
「クライヴ様は一緒じゃないんですかっ!?」
「カレンは本当にクライヴが好きなのね」
「えっ!? いえ、そういうわけでは……」
「クライヴさんでなく、申し訳ございません」
「セバスチャンさん!? あわわ、そういうわけではないんです別に!」
「……アリス様、どうしてセバスチャンさんと?」
リンスがそう尋ねると、アリスは先程の出来事を二人にも説明する。状況が状況、ということもあり集まった四人はシエルの安否確認を優先すべきと判断する。
「セバスチャンは彼の命令で、私の護衛だそうで……悪いけどリンスとカレンは屋敷内に残ってるネズミの駆除を引き続き頼んだわ。私達が、伯爵のところへ急ぐ」
「わかりました、お気をつけて」
「クライヴ様に会ったら、情報の共有をしっかりとしておきますね!」
リンスとカレンは、再度別行動へと移る。アリスとセバスチャンは、目的地をシエルがいるはずの部屋へ変え足を進めた。
「そういえば、いくつかお聞きしたいことがあるのですが、宜しいでしょうか?」
「何?」
「ヴァインツ家のメイドが、戦闘能力をお持ちなのは何故ですか?」
「それは、セバスチャン……。貴方が一番その理由をわかっているんじゃないの?」
「何のことでしょうか」
「……あの時の使用人なら、貴方が殺したでしょ」
セバスチャンはそれでも顔色を変えず、答えるだけ。