第20章 牢獄
「ひぃ、ひぃ……流石だよ、アリス嬢。本当にいい執事を持っているね」
「御託はいいわ! エンジェルドラッグの首謀者を探している」
「……一昔前に、流行ったやつか」
「知っているのね」
「詳しくは知らない。ただ、そいつをやった奴の死体が一時期この場に埋め尽くされたことはあったかなぁ? あれは悲惨な出来事だったね。人間が、天使になりたいだなんて」
「人間は、天使になんてなれはしない」
「そうかい?」
二人の視線が鋭く交差する。アリスのいつも以上に鋭い目つきに、アンダーテイカーは観念したように棺に腰掛け口を開いた。
「見るも無残な姿だよ。穴という穴から内臓、血液、その他諸々。飛び出して、吐き出して、汚くて醜悪で……一体どうすれば、こんな死体に出来上がるんだろうねぇ?」
「その中に、傷が治りかけている者はいたりする?」
「ああ! いるねぇ、中には。でもそれも中途半端なもんさ」
「体内は調べた……?」
「赤黒い、錠剤の残骸。これがエンジェルドラッグってやつなのかい? アリス嬢」
「そうよ……」
ぐっと、アリスは胸元を掴んで顔を歪めた。思い出したくもない、事件。