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黒執事 Blood and a doll

第17章 幻想



 そこで、皆でハッピーバースデー! とお祝いするというものらしい。

 この時点で、アリスは若干乗り気ではなかった。それもそうだろう、あのセバスチャンを自分一人で引き留めていろという作戦なのだから。


「あのセバスチャンを引き留める自信がない」

「そんなことでどうする! 頼む、お前にしか頼めないんだっ。シエルは接待もあるだろうし……俺だと、すぐ顔に出るらしくて」

「そうでしょうね」

「なんで迷いなく言い切るんだ?」


 アリスは再び作戦内容が書かれているメモに目を通し、ソーマを見た。


「合図は、どんなものを?」

「アグニでも向かわせる。わかりやすいだろう?」

「そうね。はぁ……とんでもないハロウィンだわ。やればいいんでしょ」

「よく言ってくれた! じゃあ、早速頼んだぞ!!」

「はいはい」


 少しだけ重い身体を引きずって、セバスチャンをまず探すことにする。会場を出てしまえば、案の定程よい静寂が廊下を包み込む。秋風が窓から吹き込み、涼しいのやら寒いのなら。身震いを一つすると、窓を外を眺めた。


「ん? あれは……」


 窓の外から見えた薔薇園。薄らと、セバスチャンらしき人物が見えた気がした。アリスは急いで薔薇園へと急いだ。ここで見失うと、また厄介だ。

 息を切らして薔薇園まで下りると、やはりセバスチャンが薔薇の手入れをしながら微笑んでいた。ふと、彼はアリスに気付いたのか視線を向けた。

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