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黒執事 Blood and a doll

第15章 覚悟



「はぁ……僕の可愛い姫様。どうか、生きて戻ってきてください」

「――っ……!! ぐあああッ!!!」


 内部から身体を引き裂かれそうな痛みが、襲い掛かる。酷く暴れ始める私を、彼はぎゅっと抱きしめた。


「こうしています。だから、どうか耐えて……」


 彼の腕の中で暴れながら、私は再び意識を手放した。




 深い深い闇の底、もう一度あの死神に出会った。


「ああ、もう決めたのね」

「死神さんには悪いけど、私は死なないよ」

「あら! えらく自信満々じゃない?」

「むかつく悪魔を、ぶん殴りに行くから」

「はんっ、いい度胸じゃないの。あんたみたいな愚図な人間に、何処までやれるか見物じゃないの! 言っておくけど、アタシ同情はしない主義よ」


 けれど彼が、私に武器を突きつける様子はない。まるで魂を狩る気がないみたいに思えて、でもどうだろう? 実際のところは知らない。


「ねぇ、アリス。いいこと教えてあげましょうか?」

「なに?」

「実はね……」


 グレルさんの最後の言葉は、私の深い意識が覚醒すると同時に微かにだけ聞こえた程度だった。体内に居座っていた熱が、引いていく気がする。もう、この場所で彼に会うことはないのかもしれない。

 彼に別れを告げるように、唇を動かした。


「……ありがとう」



 ――アリス、あんたは元々リストに載ってなかったのよ。











「姫様……?」


 見慣れた天井が見えた。これは、私の屋敷だ。視界に入り込む彼は、たぶん……クライヴさん。

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