過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第58章 お人好しの生贄
食事を楽しみながらナナシとナイルはポツポツと会話をしていた。
ナイルがエルヴィン達と初めて出会った時の話や、
憲兵団の仕事、ナイルの家族についてなど、
彼は意外と饒舌のようで色々話してくれる。
ナナシも『普通の人間』の生活がどのようなものであるか
知る必要があったので(調査兵団は『普通』とは認定していない)、
ナイルの話は大変興味深いものだった。
不意にナイルの話が途切れたので、どうしたんだ?と思っていると、
彼は真面目な表情で尋ねてきた。
「なぁ、失礼な事聞くようだが本当の所・・・あんたは
エルヴィンの何なんだ?まさか本当にあいつの婚約者なのか?
あいつは独身主義だったから未だに信じられなくて・・・」
どうやらナイルに相当疑われているようだ。
普段からエルヴィンの行いが悪いせいなのだろう。
「ドークさんがそう思う方で結構ですよ」
ナナシとしてはナイルに婚約者の振りをしているだけだと
暴露しても構わないのだが、それでは自分を婚約者に
仕立てた意味が無くなってしまうなと思い直し、
ナイルに少し意地悪な返事を返すと、彼は眉を寄せ
真剣に考えているようだった。