過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第42章 買い物へ行こう☆
「これで好きな物を買って来なさい」
「あー、うん。有り難いが財布ごと渡されるとは思っていなかったぞ」
「忙しくて使う暇も無かったからね」
「でも、恋人とかにはつぎ込んでおるだろう?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
幸せそうだった顔から一気に暗い顔をされ、
ナナシは戸惑う。
団長職に就いているし、エルヴィンくらいのイケメンなら
女の一人や二人いてもおかしくないと思って
そう言ったのだが・・・触れてほしくない話題だったのだろうか?
そこでナナシはハッと気づく。
「すまん!お主はもう既婚者だったのか!?
なら外に恋人がいるはずも無いよな。
どうもこういうのには疎くて・・・」
謝罪すると、エルヴィンは更に暗い影を落とし、
終いには目元を手で覆ってしまった。
リヴァイ、ミケ、ナナバは心の中で「残酷過ぎる」と
エルヴィンに同情する。
疎すぎて逆に恐い。
今まで散々囁いていたエルヴィンの愛の言葉を
信じていないようなナナシに、ナナバは
「これ以上追い打ちしないであげて」と頭を撫でながら
言った。
「私は・・・独身だ、ナナシ。昔から君しか見ていない」
覇気のない声で呟いたエルヴィンの弱り具合に、
ナナシが「そんな昔から私の力を利用しようとしていたのか」と
止めの一言を発すると、彼は机に突っ伏したまま動かなくなった。
ナナバがナナシの背中を押して「行くよ」と外に連れ出す。
リヴァイとミケは思った。
・・・・エルヴィンは本当に病欠として休ませた方が良いかも、と。