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過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】

第40章 どっちもどっち







「リヴァイに悪気があって言った言葉じゃない。
それでも君を傷つけたなら私からも謝ろう」


エルヴィンの大きな手が自然な動作でナナシの手を握る。

温かい手に包み込まれて、無意識に強張っていた手から力が抜けた。

そこでやっと自分が我を忘れて何かを捲し立てていた事に気づき、
ばつが悪くなった。


「すまん・・・私は少しどうかしていた・・・」

「・・・いや、俺も悪かった。言い訳に聞こえるかもしれないが
昔から俺は口が悪くて・・・・上手く物事を伝えられない」


まさかリヴァイも今更『化け物』と揶揄したからといって、
ここまで切れられるとは思いも寄らなかっただろう。

リヴァイに謝ると彼も素直に謝罪の言葉を口にし、
困ったような表情で自分の悪い所を説明する。


「私も・・・そうだから気にするな。・・・・ただ、
抜きん出るだけで人は恐れを抱くからリヴァイは気をつけた方は良い。
『人類最強』という称号は希望でもあり、
恐怖の対象にもなるから・・・・・」


下手をしたら『迅鬼狼』のように殺されてしまう・・・
その言葉は飲み込んだが、リヴァイには伝わったようで
「肝に銘じる」と頷いてくれた。


彼は無駄に死ぬべき存在ではないと考えていたナナシが
胸を撫で下ろしていると、膝の上に置いてあった手の上に
エルヴィンの手がまだ置かれている事に気づく。

チラリとその顔を見てみると、エルヴィンは慈しむような瞳で
ナナシを見つめていてドキッとした。


「君が・・・そういう危険を顧みず、
調査兵団に尽くしてくれているのはわかっているよ。
普通はその異常性を隠したいはずだ。生き辛いだけだからね。
それを見せてくれている君に感謝こそすれ、
殺そうなどとは思わないよ」



『そういう危険』というのは殺される危険という意味だろう。


我ながら単純だとわかっていたが、
エルヴィンの言葉はナナシの心に火を灯した。

エルヴィンが自分を殺さないのも利用したいからだと
理解していてもその言葉は嬉しいもので、
誰かに理解されるというのは長年孤独に生きてきたナナシにとって
温かいものだった。




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