過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第40章 どっちもどっち
こいつらも所詮ただの『人間』だったのだ。
最愛の者と仲間を理不尽に殺した『人間』なのだ、と。
人形のように表情を無くしたナナシの様子に気づいたのか、
リヴァイは僅かに目を見開いた。
「・・・だったら?私が化け物だったら何だというんだ?
何も害を与えていないのに巨人達のように殺すのか?」
「おい、ちょっと待て。誰もそんな事言って・・・」
「知っておるか?人間というのは自分達と少し違うというだけで
排除の対象にするのだぞ。最初は忌み嫌い陰口を叩くだけだが、
賛同する者が多ければ多いほど強気になり・・・
最後は対象者の命を奪う。『これは正義の行いだ』と宣って、
自分達がさも正しい行いをしたのだと酔いしれる。
私はどこかでお主達ならそんな人間じゃないと期待していたが・・・
所詮『人間』は『人間』であったようだ。
正直、残念に思ったぞ」
「聞け。誰もおまえを殺そうなんざ・・・」
「勝手に期待を持った私が悪かったのだ。
それに私はお主らの『仲間』ではない。
いつ殺されそうになろうが仕方ないと考えるべきだった。
『人間』と『化け物』は相容れぬ存在だからな。
精々寝首をかかれないように気をつけるさ」
「ナナシ」
不意に聞こえたエルヴィンの呼び声にナナシは我に返った。
部屋の中を見渡せば、全員が驚いたような表情で
ナナシを見ている状況で、視線をエルヴィンにやると
彼は哀しそうな、それでいて優しげな眼差しで
ナナシを見つめていた。