過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第35章 薬
「つまり性欲を抑える薬なのか?」
「せ・・・いよ・・・・・・く」
この男・・・どれだけ私に執着しているんだっ!?
珍しくあけすけな物言いをするエルヴィンに言葉を失いかけるが、
ナナシはどう説明するか頭を切り替える。
「正しくは違う。お主のそれは・・・ちょっとした病気というか
アレルギーみたいな?一定の人間が近づくと神経が過剰反応してしまって
精神的にも不安定になる。それを抑えるのがその薬だ」
「・・・・・・病気・・・」
あからさまに傷ついた表情をしたエルヴィンは、
縋るような視線をナナシに寄越してきた。
その姿が大型犬のようで撫で回したくなるが、
それをやってしまってはいけないと自分を叱咤する。
どうやらハンジ達も驚きの余り声が出ないようだ。
冗談半分で「病気だ」とは茶化して言っていたが、
エルヴィンの異常行動が本当に病気(ナナシの言葉を借りるなら)とは
思わなかったのだろう。
「これを飲まなければ私はどうなる?」
エルヴィンが真剣な表情でそう尋ねてきたが、
今まで飲まなかった輩は存在しなかったのでどうなるかなど知らない。
拒否ってきた奴はナナシが実力行使で飲ませていたせいもあるが。
「今まで飲まなかった輩はいなかったから、どうなるかなど知らぬ。
お主が飲まないのであれば、原因物質である私がここから去るだけだ」
「それはダメだ。兵団から離れる事は許可しない」
「なら、飲め」
「・・・・・・・・・・・・・」
エルヴィンは暫く黙考していたが、
納得出来なかったようで質問を口にする。