過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第5章 地下街のゴロツキ
「おまえ…まず食って見せろ」
「…何故?」
「馬鹿か!毒が入ってるかもしれないだろ!
兄貴が言ってたんだ!地下街では迂闊に食いもんを口にするなって」
少女の言葉に納得しつつも、自分から食べ物を寄越せと言っておきながら
身勝手な注文だなと溜息を吐く。
ここでまた何か言い返しても面倒なので、
大人しく団子を口に含みゆっくり咀嚼してやった。
その様子を少女は真剣に見ていたが、
ナナシが団子を飲み込むのを見てごくりと喉を鳴らすと
確認するように尋ねる。
「…何とも無いんだな?」
「そんなに心配なら食うな。面倒くさい」
「わぁぁぁぁっ!待って!食う!食わせろ!!」
団子の包みを取り上げると少女は慌ててそれを取り返し、
やっと団子を頬張った。
一口食べると少女は頬を紅潮させ目を輝かせながら
次々団子を食べていく。
「うっめぇぇっ!こんな美味い菓子初めてだ!
地上には変わったもんがあるんだな」
「…いや、これは私が作ったものだから地上には無いかもしれん」
地上にみたらし団子や和菓子が売っているのを見たことがないなと改めて思う。
異世とこの世界では微妙に文化が異なり、
ナナシが好んで着る和服も珍しく目立つものだった。
少女はナナシの言葉を聞くと目を丸くさせ
「すっげーな、おまえ」と笑顔で賞賛してきて、
ナナシは首を傾げる。
何が凄いのかわからないでいるナナシの態度に
少女は胸を張って言った。
「だってよ、地上で売ってないって事は、これはおまえにしか作れないって事だろ?それって凄くねぇ?上の連中は珍しいもんが大好きだから、これ売ったらボロ儲けすんじゃねぇの?」
「あぁ成程、確かにそうかもしれんな」
「絶対そうだって!店出せよ」
串を咥えながら上機嫌で少女はナナシの背中を
バシッと叩いた。