第1章 ファーストキス
夢売る立場にいて、世界中から応援してくれてる人たちがいるのに、そんなのあたしは許せないな。
ファンの中には、本気で応援してる人だっている。
馬鹿みたいなお金を掛けて、少しでも貢献しようと努力している人だっている。
でも、そんな人たちにガッカリさせるようなことをするなんて、有り得ない。
もちろん、それだけの二宮さんじゃないことは、このあたしでもわかる。
でもだからこそ、ちゃんとしてほしいのにな……。
……はあ…………。
あたしは、なんともいいようがない気持ちを振り払うため、お姉ちゃんが切り分けてくれたお肉を頬張った。
「…お姉ちゃん、ちょっと外出てくるね?」
あたしがそう言うと、お姉ちゃんは煙草を吸う手を止めた。
「どした?気分悪くなった?」
「うん……。」
「大丈夫?外の空気でも吸ってくる?」
「うん。そうする」
あたしは、心配だからついていくというお姉ちゃんを断って、お店の外に出た。
……ふぅ……。
あたしは、深呼吸した。
んん、冷たい風が身に染みて鳥肌がたつ。
でも、冬の澄んだ空気はやっぱり、気持ちいいね!
しばらく深呼吸していると。
「ねぇねぇかーのじょ?今ひとりなの?
だったら、俺らと遊ばない?」
「へっ?……ぁ、ちょっ!や、止めてくださいっ!」
3人組の男に囲まれてなんだか嫌な予感……。
「や、止めてくださいって!!!」
「いいじゃん、今ひとりなんでしょ?」
……こ、コイツら……。
いくら前に、ストーカー野郎を見事撃退したあたしでも、さすがに男3人の力には敵わない。
それでも諦めなかったけど、もう、だめ。
そう思ったその時。
「何やってんの?」
明らかに怒ってる声。
……誰?
突然、あたしの腕を掴む力が弱まったと思ったら、一気に3人組があたしから離れた。
「ああ?お前、誰だよ!」
腕を強く引っ張られ、後ろから抱き締められる。
「悪いけど、コイツ一人じゃないんで」
「……っだよ、男いんのかよ。つまんねぇの」
そう言ってイラつきながら帰っていく3人組。
「大丈夫か!?」
体をくるっと回転させられて、肩をがっしり掴まれる。
見上げると、心配した二宮さんがあたしを見下ろしていた。
「…………はぁっ……」
あたしはホッとして、力が入らなくて倒れ込んでしまった。