第4章 夏休み開けて
霧が晴れる頃に 97話 空海
「慶兄!かえせっ!」
「かえせよぉ!」
「とってみろや!!」
慶は腕を高く上げ、手にはテレビのリモコンを持っているらしい、2人のそっくりな顔をした男の子がぴょんぴょんはねながらリモコンへ手を伸ばしている。
「海(かい)、空(くう)その辺にしなよ、どうせ取れないよ」
林が姉らしく弟達をたしなめる。
(霙空と霙海、で霙林か、全部2文字だ…)
そんな霙家の名前でどうでもいいことを考えていると林に声をかけられ気付いた空と海、そして慶がこちらを向く。
「あ、霧ケ谷さん!」
「楓さん!!」
すでに話しは通っているらしく仁と楓の顔を見るなり林と同じ呼び方に語尾がさんになった呼ばれ方をされた。
いきなり名前を呼ばれビクッとした楓は久しぶりに人見知りになり仁の後ろに少し隠れながらか細く挨拶をした。
「…こ、こんにちは…」
「海君と空君か、よろしくな」
フォローする様に仁も挨拶すると海が目を輝かせる。
「霧ケ谷さん!楓さんが倒れた時にお姫様抱っこで運んだというのは本当ですか!」
次の瞬間仁と楓は大きな声をあげた…