第20章 -年上-(黄瀬涼太)**★
「ちがーーう‼︎仕事だったの〜っ!
遊ぶ時間なんてあるか〜〜っ‼︎」
土曜日だし、いつもより
ラフな格好だったので、
てっきり遊んできた帰りだと思ったら、
どうやら、休日出勤した帰りに、
1人で飲んでいたらしい。
「…仕事が終わらないんだよぅ。」
信号待ちで止まったとき、
拗ねて怒っていたしずかっちが、
急に小さい声でポツンと言った。
初めて聞く…しずかっちの弱音だった。
「頑張ってたんスね。
じゃあ…お疲れさまでしたっ♪」
オレはしずかっちの頭を優しく撫でた。
しずかっちが元気になるように…
この前しずかっちが…
オレにしてくれたように…
「…っ⁈亮…っ⁈あ…ありがとっ‼︎」
…っ⁇
酔ってぽぉっとしたような表情で
オレを見ていたしずかっちは、
慌ててオレから離れた。
「あ!青だよ〜!行こ〜!」
しずかっちはまだフラフラなのに、
小走りで走っていた。
イヤ…だったんスか⁇
「しずかっち‼︎危ないっスよ‼︎」
オレはしずかっちを追いかけ、
不安な気持ちを打ち消すように、
しずかっちの手を握った。
「亮……涼ちゃん…」
「…?なんスか⁇
危ないから、手は繋ぐっスよ?」
いつもはあの公園を過ぎた所で
しずかっちとは別れていたが、
今日はさすがに心配なので、
オレは渋るしずかっちを言い聞かせ、
家まで送るコトにした。
しずかっちの家は、
公園から少し行った所にある
マンションだった。
「…ありがと♪
ダメだね〜酔っ払いは〜
コレじゃあ、どっちが年上か、
わっかんないね〜」
しずかっちはまだ頬が赤いし、
目がとろんとしていたが、
少し酔いも落ち着いたみたいだった。
「可愛いっスよ♪」
オレは正直に言った。
「可愛い〜?また〜!
亮太は相変わらず口がうまいなぁ」
”涼太”…⁇
酔っているからか、
しずかっちはオレのコトを
急に”涼太”と言った。
でも、”相変わらず”…って…
「亮太も気をつけて帰っ…
あ…ゴメ…涼…ちゃん…」
…っ⁉︎
しずかっちは急に
我に返ったように震えていた。
オレは思わずしずかっちを抱き締めた。
「しずかっちは、
オレと…誰を重ねてるんスか…⁇」