第15章 -内緒-(黄瀬涼太)
「インフルエンザの反応は
出なかったし…風邪ですね。
お薬出しときますね。」
「…はい。」
頭…イタイ…
昨日ずっと外にいたからだなぁ…。
何やってんだか…。
黄瀬くんに告白された次の日、
わたしは熱を出してしまい、
息も絶え絶え、病院に来ていた。
黄瀬くんに告白されたわたしは、
その場から逃げ出した。
昨日、黄瀬くんは
午後から仕事だったらしく、
早退していたので、
その後は会わなくて済んだ。
でも、授業が終わって下校しても、
家に帰る気にもなれなくて、
わたしは何をするわけでもなく、
駅前のお店を覗いてみたり、
遠回りして帰って、
行ったことのない公園に行ってみたり…
夜遅くまで外にいた。
そんなことしてるから、
熱なんか出しちゃうんだ…。
きっと、黄瀬くんの告白に
きちんと答えないで
逃げ出したりするから、
罰が当たったんだ。
黄瀬くんもきっと呆れてる。
でも、これでよかったんだよ…。
黄瀬くんの周りには、
可愛い女のコがたくさんいるのに…
なんでわたしに告白なんか…。
黄瀬くんが好き。
その気持ちは変わらない。
でも、黄瀬くんが、
わたしなんかを
好きになる理由がわからない。
たくさんドキドキさせられた。
いろんな話をしたのも楽しかった。
でも、わたしの中で黄瀬くんの存在が
大きくなればなるほど、
女のコ慣れしてる黄瀬くんに
からかわれてるんじゃないだろうか?
その思いがどうしても消えなかった。
卑屈になりすぎてるのかな…
そう思うけど、自分に自信がない。
誰もわたしのことなんか…
いらないんだから。
きっと黄瀬くんももう忘れてる…。
そんなことばかり考えながら、
薬局で薬を受け取り、
ゆっくりゆっくり歩いて
やっとマンションの前に着いた。
「すみれっち☆」
わたし…熱でもあるの…⁇
ううん…熱は…あるんだった。
だって風邪ひいてるんだもん。
でも、たしかに目の前にいる。
「今日も真っ赤スね☆
でも、風邪で真っ赤なのは、
あんまり可愛くないっスよ?」
幻でもなんでもない本物の黄瀬くんが、
わたしの目の前にいた。
「風邪…大丈夫っスか?」
黄瀬くんは
左手でわたしの頬に触れ、
右手でわたしの頭を撫でた。
そこからわたしは記憶がない。